盗撮の被害にあったら、犯人を捕まえてほしいと思うのは当然のことでしょう。
そんなときに、真っ先に思いつくのが「警察に訴えること」「被害届を出すこと」だと思います。
「被害届」とは、いわば何らかの犯罪の被害にあったことを捜査機関に申告するための書面です。
犯人がわからない場合に限らず、犯人がわかっている場合にも提出することができます。
被害届があってこそ、事件が警察に認知されて捜査につながるという一面もあるため、被害届を出すという選択は間違っていません。
ですが、被害届を出したからといって、必ずしも警察が捜査をしてくれるとは限らない点に注意が必要です。
場合によっては、被害届自体を受理してもらえないというケースもあります。ここでは、被害届の出し方をはじめ、捜査されないケース、盗撮の証拠の掴み方、警察に捜査してもらう方法などを、詳しく解説していきます。
盗撮は、公共の場所や乗物において、人の下着または身体を撮影することをいいます(撮影目的で機器を設置も含まれる)。
盗撮の事例には、次のようなものがあります。
など
盗撮というと、「盗撮罪」があるように思われがちですが、実は盗撮罪というのは存在しません。
下着や裸を盗撮する行為は「迷惑防止条例違反」に問われることが一般的です。
その他、浴場やトイレなど通常人が服を身につけていない場所を覗き見する行為は「軽犯罪法違反」、更衣室やトイレに侵入して行為に及ぶ場合には「建造物侵入罪」と、問われる罪が変わります。
たとえばトイレでの盗撮ですと、「迷惑防止条例違反」「建造物侵入罪」の2つに問われることになります。
なので、「盗撮目的で女子トイレに侵入していたものの、見つかって盗撮せずに逃げた」ような場合でも、少なくとも「建造物侵入罪」に問うことはできる、ということです。
では、実際に被害届を出したいとなったときはどうすればいいのか見ていきましょう。
最寄りの警察署へ行き、窓口で「被害届を出したい」ということを伝えましょう。
自分が住んでいる地域の最寄りの警察署、被害にあった場所の管轄の警察署、どちらでも構いません。
しかし、実際に被害にあった場所の管轄の警察署に出しておいた方が、もし捜査が行われるとなった場合などに事がスムーズに運びやすいでしょう。
必要事項を記入したら、窓口に書類を提出します。
基本的に必要な手続きはこれだけです。
なお、被害届を出すために警察署に行く際は、次のものを持参しましょう。
3つ目の「被害の状況がわかるもの」は、必須ではありませんが、手元に何かある場合は持参しましょう。
盗撮被害の場合なら、例えば、盗撮されネットに流されていた自分の画像や、自室に盗撮カメラが仕掛けられていた場合はそれを写した写真などがあると、被害の状況を伝えやすくなるでしょう。
冒頭でもご説明しましたが、警察に被害届を提出したからといって、必ず捜査が行われるとは限りません。
場合によっては被害届の受理すらしてもらえないこともあるようです。
なぜそのような実情になってしまっているのかというと、警察の人手不足という問題に加え、被害届自体には法的効力がないからなのです。
そのため、次のような場合は捜査が行われない、又は被害届が受理されない可能性が高くなります。
とくに盗撮被害の場合は、民事事件として弁護士を通し当事者同士で問題を処理できるケースが多いため、警察の方では扱われない場合が多いようです。
しかしだからといって、被害届を出すことが全くの無意味というわけではありません。
場合によっては刑事事件として扱われる可能性もありますし、もし同じような被害届が他にも複数提出されていた場合は、一個人の民事案件ではなく、連続的な犯罪行為として警察も無視できない案件になりうるからです。
警察が捜査を始めた場合、当然捜査の結果次第では犯人逮捕や刑事告訴につながることもあるでしょう。
冒頭でも触れましたが、警察に被害届を提出しても、必ずしも捜査が行われるとは限りません。
被害届は、捜査機関に被害内容を申告するための書類であって、捜査の義務を課する法的効力がないからです。
そのため、警察が「捜査に値しない」と判断すれば、被害届は受理されてもそのまま放置ということも少なくありません。
次のようなケースでは、捜査が行われない可能性が高くなります。
警察が実際に逮捕に動いてくれるのは、「被害を受けたという証拠」があるかないかという点が大きいです。
たとえば盗撮を犯人に指摘したものの、犯人が逃げてしまって「盗撮があった」という証拠を出せないというケースや、犯人が犯行を認めないというケースも少なくありません。
逮捕には、その場で犯人の身柄を拘束する「現行犯逮捕」と、犯行の後日になって逮捕状によって拘束される「後日逮捕」があります。
盗撮犯の場合は、盗撮の現場を取り押さえられることによる現行犯逮捕が圧倒的に多いです。
犯人がその場を逃走した後、後日逮捕に至るには、犯行があったことがわかる「証拠」が必要となります。
盗撮は、被害者当人が盗撮の証拠を残すというのは難しく、防犯カメラや第三者の目撃証言なしに立件するのは困難です。
そのため、被害にあったとわかったときには、なるべくその場に犯人を留めおくことが大切です。
その場で警備員や警察官を呼んでもらい、実際にスマホやカメラの中身を確認してもらえば、盗撮の証拠が見つかるでしょう。
犯人に逃げられたときには、周囲に防犯カメラがないかどうかを確認し、すぐに被害を届け出て防犯カメラをチェックしてもらうようにしてください。
警察が実際に動いてくれない可能性があると聞くと、被害届を出すのは無意味なことのように感じるかもしれません。
ですが、そんなことはありません。
実際に動いてくれるかどうかは出してみないとわからないものです。
あなたが証拠を持っていなくても、以前にも同じような被害が頻発していて、捜査が始まるきっかけになることもあります。
加えて、民事事件として慰謝料を請求するときに役立つ可能性があります。
すでに犯人がわかっているような場合や、後日犯人がわかったときに、盗撮被害で被った精神的苦痛に対する慰謝料を、犯人に請求することができます。
そのとき、被害届を提出している方が、民事訴訟や示談で有利に働くことが多いです。
犯罪行為があったことを捜査機関に申請し、捜査のきっかけにもなりうる被害届ですが、出すことによるデメリットもあります。
被害届を提出して警察が動いてくれた場合、警察の捜査に協力することになります。
被害にあったときの状況を詳しく聴取され、現場検証に立ち会うこともあります。
また、犯人が捕まったときには、盗撮画像や動画を捜査員に見られることになります。
時間と労力が必要となり、自分のわいせつな画像や動画を捜査員といえども他人に見られるという精神的負担がかかってくる可能性があります。
犯人がまだ捕まっていないが、被害届を出したのに一向に捜査してくれる気配がないというとき、「告訴状」を提出する、という手段があります。
告訴状とは、加害者へ処罰を求めることを目的とした書面であり、被害届と違って捜査義務が生じます。
ただし、告訴状は被害届よりも受理されにくいという性質があります。証拠がまったくないような場合には、なおさらです。
どうしても告訴状を出したいというときは、弁護士に相談するのが良いでしょう。
いかがだったでしょうか?
被害届はあくまでも「犯罪行為があったことの申請」であり、捜査義務を働かせる効力はありません。
被害届を出すことのメリット・デメリットを理解した上で、どういう手段を講じるのか、参考にしていただければと思います。
警察に対する相談は、警察相談専用電話 #9110へ